きたみリブログ

北見市立図書館ブログです

【中央館】書く人のトレーニング

図書館にはたくさんの本があります。

 

中央図書館で35万冊、北見市内全域だと72万冊の本があり、何せ物量がありますので、職員は淡々と本を捌いていることがほとんどなのですが、ふとした時作り手に思いを馳せる瞬間があります。

 

著者、ブックデザイナー、印刷所など、気になる方は様々ですが、特に、縦横無尽に空想の羽を広げる小説家は興味と尊敬の対象。

 

そんな折、作家の乗代雄介さんが講演会で創作について語り、数冊のノートを見せてくださいました。

乗代さんの描写ノート

厚手のノートはみっちりと文字で埋め尽くされていてずっしりと重く、思わず目を白黒させてしまいました。

 

聞くと、散歩をしては目に入った風景を描写、気になる表現に出会ったら模写、何かあったらすべてを文字という世界に落とし込んでいる描写ノートだとのこと。す…すごい。

 

小説という架空の世界を精緻に構築するためには、現実世界を文字で表現する描写力が必須。このノートは「作家としての力」を培う、トレーニングの成果なのです。

乗代作品の、架空の世界を読者に信じさせる自然な描写はここから生まれていたのですね。私たちが何気なく目にしている風景、音、感触。それらを逐一文字で書き起こす…そのストイックさに驚きを隠せませんでした。しかも高校生の頃から。

様々な作家さんが居ますが、生きることそのものを文字に落とし込んでいる方もいる、と感心した一幕でした。

乗代さんの作品は、図書館でも所蔵しています。

第34回三島由紀夫賞、第37回坪田譲治文学賞を受賞した『旅する練習』、芥川龍之介賞候補にもなった「最高の任務」「皆のあらばしり」のほかたくさんの作品があります。